股関節症は女性に多く股関節周囲の筋力のアンバランスによって起こっているケースがほとんどです。(臼蓋形成不全が原因の場合もある)
主な症状は関節の痛みと機能障害です。
股関節は鼠径部(脚の付け根)にあるので、最初は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。
今回は変形性股関節症の原因を、姿勢の分析から解説します。
股関節の悪い方の姿勢の特徴は、大きく分けて、2タイプ。
上の図でいうと「腰椎後傾(猫背)」(左)か「腰椎前傾(反り腰)」(右)の2つです。
腰椎後傾(猫背タイプ)の特徴
腰が平たんになる、または、後傾する理由は 多裂筋の筋力低下です。
多裂筋が筋力低下を起こすと腰椎が後弯し、股関節は外旋位になり深層外旋筋が過緊張をおこします。
がに股で歩く人がこれにあたります。(男性に多いです)
がに股歩きは、「トレンデレンブルク歩行」といって骨盤を固定する事が出来ないので、それに伴い内転筋も 筋力低下を起こします。
さらに内転筋が筋力低下を起こすと、踵を接地する際に膝を曲げたまま歩く傾向になります。
また、多裂筋が働いていないので、「腹筋優位の動作」が多くなってきます。
例えば、高齢者であれば、起居動作を腹筋を使って、正面から起き上がったりします。多裂筋、内転筋が弱ると寝返り動作もし辛くなります。
腹筋優位なので、股関節が屈曲位になりやすく強い股関節伸展制限(体を反る方向への動き)と、腸腰筋の過緊張が 生じます。
さらに内転筋も働いていないので、 外側の支持機構に頼り、外側広筋がパンパンに過緊張になります。
腸腰筋のストレッチを行ったり、 外側広筋のマッサージをしても全く意味を成しません。
腰椎後傾タイプの変形性股関節症では 多裂筋と内転筋の筋力低下を改善することで 骨盤アライメントが改善し、過緊張になっている筋が、リラクゼーションを得られるようになります。
腰椎後傾タイプの股関節痛の特徴
・ 筋力低下を起こす筋 / 多裂筋、内転筋、(中殿筋)
・ 過緊張を起こす筋 / 腸腰筋、外側広筋、深層外旋筋
治療方針
多裂筋、内転筋の筋トレで神経の促通を促し、腸腰筋、外側広筋、深層外旋筋の
過緊張を取り除く。
腰椎前傾(反り腰タイプ)の特徴
腰椎前傾タイプの方は、腸腰筋の筋力低下が最大の特徴です。
腸腰筋は、股関節の 屈曲・外旋筋という動作に深く関わっています。
腸腰筋がうまく働かないと、股関節内旋位(内股)で歩く癖が出るために、大腿骨頭の被覆率が上がり、骨盤の寛骨臼の被りを深くする現象が見られます。
それと同時に膝は、ロッキング様にピンと膝を伸ばし切って歩きます。
その結果、過剰に内旋位にならないように、常に股関節の外旋筋(お尻にある筋肉)が働き、過緊張になり梨状筋症候群や坐骨神経痛を引き起す場合があります。
また、腸腰筋と内側のハムストリングスは、同時に働くことが多いので、腸腰筋が働かなければ、必然的にハムストリングスの使用頻度も減り、筋力低下を起こします。
内側のハムストリングスの大きな働きは、歩行の際に踵が接地する時、適度に膝を曲げ緩衝動作を行うことです。
膝のロッキングは、この内側のハムストリングスの筋力低下を膝関節をロックする事で補い、体重を支持する目的で起こっているのです。
そして、不意な動作で膝を曲げた瞬間に、内側のハムストリングスの筋力で体重を支えられないので「膝崩れ」を起こしてしまう事が多々あります。
学生の頃、膝をピーン伸ばして立っている友人の後ろに回って「膝カックン」をやった事はないでしょうか?
あの現象です。一人膝カックンを起こします。
また、下肢を棒状にしてほとんど膝を伸ばす筋肉も使わないので、 大腿直筋という筋肉も短縮しやすくなり、歩行時の踵を接地する際には腸腰筋ではなく、大腿筋膜張筋を多く使用し過緊張になりやすくなります。
腰椎前傾タイプの股関節の痛みの特徴
・ 筋力低下を起こす筋 / 腸腰筋、内側ハムストリングス、(中殿筋)
・ 過緊張を起こす筋 / 梨状筋、腰方形筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋
治療方針
腸腰筋、内側ハムストリングスの筋トレで神経の促通を促し、梨状筋、腰方形筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋の過緊張を取り除く。
股関節の痛みでお悩みの方は、是非一度当院にご相談ください。
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